地域マーケティングの仮説(具体的例)

作成者: サンダル王子|Nov 23, 2025 1:20:21 AM

本記事では以下の記事で取り上げた地域マーケティングを具体的事例で考えてみたいと思います。

https://www.chotoko.com/blog/地域マーケティングについて考える

◆埼玉県川口市

<現状>

川口市は人口は年単位の推移では微増微減をしています。10年間みてみると約10,000人ほど、20年間からみてみると12万人ほど、人口が増えていることがわかります。

また数年前から外国人人口が増えたようです。また、日本人の転居者は埼玉を除くと、東京からの転居者が最も多くなっております。

さらに、年齢階級毎の転入者数では、20~34歳の転入が多く、特に20~29 歳の転入超過数が多くなっています。

出典:川口市ホームページ および e-stat

ここでは、外国人と日本人の内訳は置いておいて、なぜ人口が伸びたか、そしてなぜ東京からの転居者が多いのかを考えてみたいと思います。

<なぜ東京からの転居者が多いのか>

これは東京の家賃の高さと、それと比較したときの川口市の家賃の安さと立地にあると考えられます。

立地の良さの見解は川口市の公式文書でも述べられていると通りですが、荒川を挟んだ東京のすぐ北に位置しており、東京の中心地までの距離は東京の北側と比べればほとんど変わりません。

さらに家賃については、かつて電車内でも、荒川を挟むだけで住宅価格が全然違うというCMが流れていたことからも東京と比べると相対的な安さが伺えます。

これらの内容から、まず地方出身者が東京には来るが、家賃の高さから川口市へいく傾向や、東京で育った若者も独立を機に、川口市へ移住する傾向にあるという仮説の裏付けが非常に有力だと言えます。

<川口市の戦略>

川口市は、地理的な優位性を生かして、居住地は提供しつつ、住民は、東京へ通勤・通学する大量の人の移動するという構造を作り上げました。

このように、住民税という利益を得る一方で、住民の所得の多くが東京の企業から得えるという、「住宅地としての税収」と「雇用地としての経済力」を交換している、地域間ポートフォリオです。

つまり、無理に大規模な都心型のビジネスセンターや、高付加価値な雇用を創出する努力を最優先するのではなく、「職住近接」の「職」を東京にアウトソースし、「住」の機能に特化するという「やらない戦略」を採ったと言えます。これにより、資源(特に土地利用)を住宅供給と生活利便性の向上に集中できたということが考えられます。

今後の戦略としては、

・域内での経済も回していくこと:商店街の活性化、公共交通・回遊性の改善

・外国人が増えていることをどう捉えるか(決してネガティブなことと断言はできないと考えます)

であると考えられます。

 

このように、地方創生には自分たちの強みを活かし、そして、できないことを明確にして、周辺地域も活かしていくことが重要だと考えられます。

川口市の事例から見えてくるのは、地域が持続的に発展するためには、「自分たちの強みを正しく理解し、できないことを無理に追わず、周辺地域と補完し合うこと」が不可欠だという点です。

地域単体で完結する発展は難しい時代だからこそ、地理的・経済的な特性を踏まえた“戦略的な役割分担”が、地方創生の大きな鍵になるでしょう。

この視点が、読者の皆さんがご自身の地域を見つめ直すきっかけになれば幸いです。